HOME  >  みんなの声  >  先生のコラム  >  鍼灸医学と病理学の接点を求めて-その4.上皮性組織は三焦・気の通路

先生のコラム

鍼灸医学と病理学の接点を求めて 西岡敏子
 
その4.上皮性組織は三焦・気の通路

腫瘍の組織学は面倒である。
先ず「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」に分ける。その違いは、悪性度(増殖速度が早い,転移しやすい,再発しやすい,死亡率が高いなど生命予後に対する影響の程度のこと)、異型性(発生母地の正常な組織構造や形質からの隔たりをいい、構造異型性と細胞異型性がある)、分化度(腫瘍細胞が発生した母細胞の特徴をもつ程度のこと)の三つから判定できる。
「悪性腫瘍」は、その由来によって「癌」と「肉腫」に分ける。「癌」は「上皮性組織」に由来し、「肉腫」は「非上皮性組織」に由来する。

では「上皮性組織」とは何だろう? 前回「原腸胚」が「内胚葉」と「外胚葉」の二層を成すことをみた。では「上皮」なら「外胚葉」の「皮膚」と「神経系組織」だと思うが、実は腫瘍学ではそういかない。「内胚葉」と「外胚葉」由来のものが「上皮性組織」なのだ。しかもその中から「神経系組織」が除外される。

図1:原腸胚図1を見ると「上皮性組織」とは、「外界に何らかの形でつながっている組織」であり、「非上皮性組織」は、「外界とは直接つながっていない組織」として理解できる。小林詔司先生が「三焦は皮膚のつながり」とおっしゃったが、上皮性組織とは皮膚と、口腔と肛門を接点として皮膚と連続している腸管を含むものである。さらに五蔵と関連するといわれる「九竅」も「上皮性組織」である。

『難経』31難に「三焦者.水穀之道路.氣之所終始也.(三焦は水穀の道路.氣の終始する所也.)」とあるが、三焦の機能が悪いと全身の気の動きも悪い。卑近な例でいえば常習性の便秘のある患者さんがそうである。
腸閉塞は重篤な病態であるが、便秘だって軽い腸閉塞だと思う。鍼をしてお腹が動き出すのは、三焦の気が動いた証拠である。
「癌」の誘因もそんなことと無関係でないかも知れない。

図2:三焦図3:ヒトの上皮組織
「上皮性組織」は細胞の形から皮膚の「扁平上皮」と内壁粘膜の「円柱上皮」に分かれ、細胞の重なり方によって「単層上皮」と「重層上皮」に分かれる。「腺上皮」は内部に陥没して分泌能をもつようになった上皮組織である。「移行上皮」は膀胱、尿管に限って用いられる。尿の貯留の状態によってその厚みを変化させるからだという。

癌の特徴はめったやたらに増殖することである。数の増加だけでなく大きさや形も乱れてくる。「陽実の極み」である。この異常な細胞分裂の「おおもと」は「核」にある。細胞を「陰陽」に分ければ、細胞質が「陽」で核が「陰」だろう。「陰」の「核」を見ればその異常性が一目瞭然である。「核/細胞質比」が増大し、大きく著明な核小体と異常な核分裂などが観察される。
図4:細胞の異常な変化

「先生のコラム」トップへ

ページの先頭へ戻る