HOME > みんなの声 > 先生のコラム > 鍼灸医学と病理学の接点を求めて-その5.「半陰陽」と性分化・腎
病理学概論の最後に「先天異常」の章があり、そのまた最後の方に「半陰陽」という言葉が出てくる。ここでいう「陰陽」は「男女」のことである。 だから「半陰陽」は直訳すると「男女半分づつ」ということになる。 辞書には「両性の生殖腺をもつこと。また、外性器が生殖腺と一致せず、まぎらわしい形をしていること。ふたなり。」とある。 「その2.64分裂で着床」の回でもふれたが、「陰陽」は「太極」を2つに分けたときの呼称であるから、「太極」は恐らく「中性」なのであろう。それもイメージしにくいので「両性具有」や「完全な両性の結合」が理想とされたのだろう。伝説や神仏の像にしばしば見られるものである。図1左は半身づつの両性具有のインドの神像、右は尾部で絡まる人面蛇身の伏義と女咼、中国の古い神である。 ヒトが「両性具有」に憧れるのは、発生初期に「両性具有」だったからではあるまいか。 ところで鍼灸医学には「腎」という大きな概念がある。「腎」という概念が何を示すのか、議論の多い所である。腎臓はもちろんであるが、生殖器、副腎までとなると、骨盤内臓器から後腹膜臓器までを含むこととなる。しかし、これが発生学からみるとごく当り前のことになってしまうので驚きである。 しかし、このへんの発生は「中胚葉」を原基として外胚葉の組織と結合する非常に複雑な成り立ちになっている。 詳しいことは省略して結論をいうと、「中胚葉」の「腎節」からまず「前腎」が形成されるがこれは消えてしまう。次にできる「中腎」は骨盤内に下降して「生殖器」になる。「後腎」は上昇して副腎の下に位置して「腎臓」になるのである。つまり鍼灸医学でいう「腎」はもともと一体なのである。古代の人は一体どうしてこのことがわかったのだろう。不思議! 最後に「半陰陽」に触れよう。図4の上に示すように発生初期にはヒトは両性具有であった。 雄になるか雌になるかは、まず染色体の組み合わせによって決まる。哺乳類では性染色体がXXなら雌となり、XYなら雄になる。 しかしながら、本物の雄になるためにはまだまだたくさんの道のりがある。すなわち、生殖輸管の雌雄分化、外部生殖器の雌雄分化、脳の雌雄分化である。これらの過程が狂うと、染色体は男なのに、外見は女になってしまうことがありうる。 まだ未分化の状態では、雄にも雌にもウォルフ管とミューラー管が存在するが、やがて雄ではミューラー管が退化し、ウォルフ管が残り副精巣と輸精管となる。一方雌ではウォルフ管が退化し、ミューラー管が発達し、輸卵管、子宮、膣の一部となる、というわけである。